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なぜ封水はなくなってしまうのだろう

排水トラップに溜められた封水は、下水からの悪臭や害虫の侵入を防ぐ重要なバリアですが、この封水は永遠にそこにあるわけではありません。様々な要因によって失われてしまうことがあります。そのメカニズムを知ることで、より効果的な対策をとることができます。封水がなくなる最も一般的な原因は「蒸発」です。水は常に蒸発しており、排水トラップ内の封水も例外ではありません。特に、気温が高く乾燥している夏場や、暖房によって室内が乾燥する冬場は、蒸発のスピードが速まります。また、換気扇を長時間回しっぱなしにしている場合なども、空気の流れによって蒸発が促進されることがあります。普段あまり使わない洗面台や浴室、来客用トイレなどは、水の補給がないまま時間が経過するため、気づかないうちに封水が蒸発してなくなってしまうことが多いのです。これが、長期不在後に家に戻ると排水口が臭う主な理由です。次に、「サイホン作用」と呼ばれる現象も封水切れの大きな原因です。サイホン作用には二種類あります。一つは「自己サイホン作用」です。これは、洗面台やシンク、浴槽などに溜めた水を一度に大量に流した際に発生します。排水管内を水が勢いよく流れ落ちる時、管内が負圧(周りの気圧より低い状態)になり、その吸引力によって排水トラップ内の封水まで一緒に引きずり込まれてしまうのです。もう一つは「誘導サイホン作用」です。これは主にマンションなどの集合住宅で見られる現象で、他の住戸や共用部で大量の排水が行われた際に、その影響が配管を通じて自分の住戸に及び、排水トラップ内の封水が吸い出されてしまう現象です。高層階ほど影響を受けやすいとも言われています。さらに、「毛細管現象」も封水を減少させる一因となります。排水トラップ内に髪の毛や糸くずなどが垂れ下がっていると、その繊維が水を吸い上げ、まるで細いストローのように機能して、封水を少しずつ排水管側へと導き出してしまいます。わずかな量でも、長時間続けば封水が有効な水位を保てなくなる可能性があります。これらの現象は、単独で起こることもあれば、複合的に作用することもあります。排水トラップという単純な仕組みの中にも、様々な物理現象が関わっており、それらが封水を維持したり、あるいは失わせたりする要因となっているのです。

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