あれは忘れもしない、ある日曜日の昼下がりのことでした。キッチンの蛇口の根元から、じわじわと水が漏れているのを発見したのです。「これはまずい!」と思い、シンク下の収納扉を開け、止水栓を閉めようとしました。我が家のキッチン下の止水栓は、ハンドル式のタイプです。これまで何度か、フィルター掃除のために開け閉めした経験はありました。しかし、その日に限って、止水栓のハンドルがびくともしないのです。「あれ?こっち向きだよな?」時計回りに力を込めますが、まるで溶接でもされたかのように固い。両手で渾身の力を込めて回そうとしても、全く動きません。その間にも、蛇口の根元からの水漏れは、ポタポタからツーッと糸を引くように悪化していきます。「どうしよう、どうしよう!」私の頭の中はパニック状態です。このままでは床が水浸しになってしまう。焦れば焦るほど、ハンドルを握る手に力が入らなくなり、冷や汗が背中を伝います。他の止水栓はないか?と考えましたが、キッチンにはここしかありません。そうだ、家の元栓を閉めればいいんだ!と思い立ち、慌てて玄関の外にある水道メーターボックスへ走りました。メーターボックスの蓋を開け、元栓のバルブを探します。幸い、元栓は比較的スムーズに回り、家全体の水の供給を止めることができました。キッチンに戻ると、蛇口からの水漏れは止まっていました。心底ホッとしましたが、同時に、いざという時に止水栓が機能しないことの恐ろしさを痛感しました。結局、その日は元栓を閉めたまま過ごし、翌日、水道業者さんに来てもらいました。業者さんによると、やはり長年の使用で内部が固着していたとのこと。専用の工具であっさりと回してくれましたが、「無理に力を入れすぎると配管ごと破損することもありますから、回らない時は早めに連絡くださいね」と言われました。あの時の冷や汗と教訓は、今でも忘れられません。以来、定期的に止水栓を少し動かしてみるように心がけています。
止水栓が回らず冷や汗をかいた体験