ある朝、カーテンを開けると、見慣れた家の前の道路が、見慣れない光景に変わっていました。オレンジ色の回転灯をつけた重機、ヘルメットをかぶった作業員の人々、そして山積みにされた巨大なパイプ。郵便受けに投函されていた「水道管更新工事のお知らせ」が、ついに現実のものとなった瞬間でした。千葉若葉区ではトイレつまりから漏水した排水口交換にこれから数週間、騒音と振動、そして交通規制が続くのかと思うと、正直なところ、少し憂鬱な気持ちになったのを覚えています。しかし、この非日常的な期間を、ただ「迷惑なもの」としてやり過ごすのではなく、少しでも快適に、そして安全に乗り切るために、私が心がけたこと、そして学んだことがいくつかありました。 まず最初に行ったのは、改めて「工事のお知らせ」を熟読することです。そこには、工事の目的（老朽化した水道管を地震に強い新しいものに交換するため、と書かれていました）、工事期間、日中の作業時間、そして最も重要な「断水予定日時」と「緊急連絡先」が記載されています。さいたま市南区で起こる洗面所専門のトラブルが私はすぐに、断水の日時をキッチンのカレンダーに大きく書き込み、スマートフォンのスケジュールにも登録しました。また、緊急連絡先の電話番号は、何かあった時にすぐ連絡できるよう、電話帳に登録しておきました。この「情報の把握と整理」という一手間が、その後の心の余裕に大きく繋がったように思います。 次に意識したのは、日々の「安全確保」です。特に、我が家には小さな子供がいるため、工事車両の出入りや、掘削された穴には細心の注意を払いました。「あの場所は危ないから、絶対に近づかないこと」と繰り返し言い聞かせ、家の前の道路で遊ぶのは工事が終わるまでお休み、というルールを決めました。また、工事に伴う片側交互通行で、朝の通勤時間帯には渋滞が発生することも予想されたため、いつもより5分早く家を出る、といった小さな工夫も実践しました。こうした事前の備えが、日々のストレスを確実に軽減してくれました。 工事期間中、最も気を揉むのが断水ですが、これも事前の準備が全てです。断水の前日には、飲料水はもちろんのこと、トイレを流したり、手を洗ったりするための生活用水を、浴槽や大きめのバケツにたっぷりと汲み置きました。忘れてはならないのが、断水が終わった直後の「使い始めの水」です。工事の影響で、一時的に水にサビや空気が混じり、赤っぽく濁ったり、白く泡立ったりすることがあります。そのため、断水復旧後は、いきなり浄水器や給湯器、洗濯機などを使わず、まずは屋外の蛇口などでしばらく水を流し続け、きれいな水が出るのを確認してから室内の蛇口を使う、という手順を徹底しました。 そして、意外と大切だと感じたのが、現場で働く作業員の方々とのささやかなコミュニケーションです。朝、ゴミ出しの際に会えば「おはようございます、ご苦労様です」と声をかける。それだけで、お互いの気持ちが少し和らぐように感じました。彼らも、住民に迷惑をかけていることを承知の上で、私たちの生活インフラを守るために、炎天下や厳しい寒さの中で働いてくれています。その姿に敬意を払い、お互い様という気持ちで接することが、この期間を乗り切るための、何よりの潤滑油になったのです。 工事が終わり、静けさと平穏が戻ってきた日。アスファルトが新しくなった道路を眺めながら、私は、この地下に埋設された新しい水道管が、これからの何十年、私たちの安全な暮らしを支えてくれるのだという事実に、深い感謝の念を抱きました。家の前の水道管工事は、確かに不便なことも多いですが、それは未来への大切な投資。少しの知識と準備、そして思いやりの心があれば、きっと乗り越えられるはずです。