ある日突然、お風呂のお湯が出なくなった。シャワーから出てくるのは、冷たい水だけ。あるいは、キッチンでお湯を使おうとすると、給湯器のリモコンに見慣れないエラーコードが表示されている。そんな「給湯器の故障」を疑わせるトラブルは、私たちの快適な生活を根底から揺るがす、深刻な問題です。しかし、全ての不具合が、即座に修理や交換が必要な「故障」とは限りません。中には、簡単な確認やリセット作業で、復旧するケースも少なくないのです。ここでは、給湯器の不調に気づいた時に、まず最初に確認すべき、代表的な症状とその原因について解説します。まず、最も多いのが「お湯が全く出ない」という症状です。この場合、最初に確認すべきは、給湯器のリモコンの電源が、きちんと「オン」になっているか、そして、家のガスメーター(マイコンメーター)の元栓が開いているか、という基本的な点です。地震の後や、ガスを長時間使用した後などに、安全装置が作動して、ガスの供給が自動的に遮断されていることもあります。次に、「お湯の温度が安定しない」、あるいは「設定した温度よりもぬるい」という症状。これは、給湯器内部の温度センサーの不具合や、経年劣化による熱交換効率の低下が考えられます。また、冬場など、元の水道水の温度が非常に低い時期には、給湯器の能力が追いつかず、お湯がぬるくなることもあります。そして、注意が必要なのが「給湯器本体からの水漏れ」です。本体の下部から、ポタポタと水が滴り落ちている場合、内部の配管やパッキンが、経年劣化や、冬場の凍結によって破損している可能性があります。放置すると、大量の水漏れや、内部の部品の腐食に繋がり、不完全燃焼などの危険な状態を引き起こす可能性もあるため、早急な対応が必要です。さらに、「お湯を出すと、給湯器から異音がする」「排気口から、黒い煙やススが出る」といった症状は、内部での不完全燃焼や、ファンモーターの異常を示唆する、極めて危険なサインです。この場合は、一酸化炭素中毒のリスクがあるため、直ちに使用を中止し、換気を行った上で、専門業者に連絡してください。これらの症状を冷静に観察し、原因を切り分けることが、パニックにならず、安全に、そして的確に対処するための、第一歩となるのです。