トイレの詰まりは、日常生活で最も避けたいトラブルの一つですが、その原因は排水管の構造と密接に関わっています。排水管がどのように設計され、どのような状態にあるかによって、詰まりの発生しやすさが大きく左右されるのです。まず、排水管の「曲がり角(エルボ)」の数や角度が影響します。汚物は直線的な配管であれば比較的スムーズに流れますが、曲がり角が多い、あるいは急な角度で曲がっている箇所が多いと、そこでトイレットペーパーや汚物が引っかかりやすくなり、詰まりの起点となることがあります。特に、古い建物では排水経路が複雑になっている場合があり、注意が必要です。次に、前述の通り「排水管の勾配」も詰まりやすさに直結します。適切な勾配が保たれていないと、汚物が管の途中で滞留し、そこに後から流れてきたものが積み重なって詰まりを引き起こします。新築時は適切でも、地盤沈下などの影響で経年的に勾配が変化してしまうこともあります。また、排水管の「口径(太さ)」も重要です。一般的に、トイレの排水管は他の排水設備(洗面所や浴室など)よりも太いものが使用されますが、それでも一度に大量のトイレットペーパーを流したり、水に溶けない異物を流したりすれば、管の太さに関わらず詰まる可能性は高まります。さらに、排水管内部の状態も見逃せません。長年の使用により、排水管の内壁には尿石や油脂、スケールなどが付着し、徐々に管の内径を狭めていきます。これが「排水管の狭窄(きょうさく)」と呼ばれる状態で、水の通り道が狭くなるため、わずかな量のトイレットペーパーでも詰まりやすくなります。特に鉄製の古い配管では、内部の錆がこれに拍車をかけることがあります。加えて、排水管と便器を繋ぐ「排水ソケット」部分の劣化やズレも、段差を生じさせて詰まりの原因となることがあります。このように、トイレの詰まりは単に流したものの問題だけでなく、排水管の構造や状態が複合的に絡み合って発生するのです。
トイレ詰まりと排水管構造の深い仲